• テキストサイズ

砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


64

元就と市が帰宅中に襲撃を受けた――
その知らせは知らない番号からのメールで届き、月子は慌てて家を飛び出そうとして丁度帰宅した毛利の父、弘元に押さえられて自宅の中へと戻された。

「落ち着け、月子。元就なら大丈夫だ」
「離してくださいっ! 兄さんと市先輩がっ!」
「大丈夫だから落ち着くんだ、月子」

半狂乱とも言える様子に弘元はぐっと肩を掴んで抑え込み、月子の目を見てゆっくりと言葉を紡ぐ。強めの語調で言われたそれにハッと息を飲んで視線を合わせた月子は、静かなそれに徐々に落ち着きを取り戻すと膝から崩れ落ちた。
カタカタと身体を震わせて座り込んだ月子を父がソファの上に抱き上げ、背を撫でる。母が温かいお茶を淹れて手渡すと、震えながらもそれを飲んだ月子は漸く僅かだが落ち着きを取り戻した。

「ごめっ、なさぃ……わたっ、しのせいっ」
「落ち着きなさい、月子のせいではないよ。元就も市と共に直に戻ってくる」

父の直に戻ってくるという言葉に顔を上げた月子は、縋る様な表情をしていた。それだけで、過去において心に大きな傷があるのだと察せられる。父は落ち着かせるように背を撫で、頭を撫で、大丈夫だと繰り返す。
暫くして、玄関が開く音がして月子が顔を上げるとお茶を机に置くのもそこそこに駆け出した。
月子が玄関に着くと、市と元就が昴と神楽を伴って帰宅した所だった。月子は走った勢いのまま市に飛びつくと泣き出す。

「案ずるなと言うただろう」
「ひっく、そん、なっ……できなっ!」
「ああ、月子ちゃん泣かないで。市も、元就も、大丈夫だから」

ぎゅうぎゅうと市に抱き着いて離れず、泣き続ける月子に元就は呆れながら声を掛けたが、信用と心配は別問題であると言葉にならないままに訴える月子に小さなため息を落とす。
抱き着かれたままの市は苦笑しながら背を撫で、月子をあやすと玄関先で何をやっていると苦笑しながら言った父が月子を運び元就は市を促してリビングへ集まった。
/ 338ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp