第1章 砂漠の月00~70
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月子?ああ、従妹の?
小野のおばさま達を売ったあの馬鹿娘。
私小さい頃からあの子に言い聞かせてたんだけど?
"良い子ちゃんぶるのもいい加減にして"
"あんたは幸せを掴む権利は無い"
私は会う度にそう言い聞かせてるけどあの子生意気だからさ。
小野邸から歩いて数分、織田グループの傘下でもある毛利家に着き、大きな屋敷の辺りを見回す
ここが、ここがあの子の幸せの家?
あの子が住んでる確証が得れれば、こっちのものよね
遠くから、こちらに向かってくる学生服を着た男が目に入り
急いで身の隠れられる場所に入って、男を観察する
ああ、この人があの子に幸せを与えてる男なのかなあ?ねえ?月子
「月子いるかー?」
「はーい」
み つ け た
みつけた、みつけた
何幸せそうな顔してんだよ、自分の両親と居る時は表情ひとつ変えなかったくせに?
ああ、この子は自分がいかに恵まれちゃいけない女だって
思い知らせてあげる。幸せは私にだけ来ればいい。
ねえ月子?その"晴久先輩"私が貰ってもいーい?
このイケメンも私の所に来るのが一番だと思うの、今までもそうだったでしょ?
お前に幸せは訪れない、私が許さない、許さない許さない
美しい私が一番なのよ、お前は引っ込んでくれないかな?
「…」
「? どうしたんです?晴久先輩」
「いや、何でもない。もう直ぐ市も来るから中に入ってようぜ」
晴久は、月子の手を引いて家に引っ張り中に入ってった。
女はそれを見送ったあと、狭い隠れ場所から出て背伸びをする
彼女の背後に現れた市は、一瞬戸惑う
「えと、元就のお客様?」
「ん?」
誰だ、こいつ。女は興味無さげに市を無視して去って行き
「?」
首を傾げてたら元就が出てきて、急いで入れと市を招いた。
「おう、あの女何だ」
「分からぬ、妙な気配を漂わせていたが…恐らく月子の親族やもしれぬ」
市と月子にバレぬよう、窓から女を見ていた元就は軽く溜め息を吐いてそっと窓を閉じた。