第1章 砂漠の月00~70
コソコソと話していた男子生徒の横を、月子と比較的好意的に付き合ってきた女子生徒が通り抜けざまに指摘していく。
その言葉にぐうの音も出ない男子生徒は、机に突っ伏して撃沈していった。
そして放課後――
「月子、準備出来たか?」
「はい! 兄さんは?」
「市と先に正門行ってる。迎えが来るんだってよ」
「そうなんですか。じゃあ、早く行かないとですね」
「そんな慌てなくても大丈夫だ。ほら、荷物持ってやる」
部活に行く者、帰る者、残って教室で話をする者様々だが月子を迎えに来た晴久を見ると思わず黙って見つめてしまう。
そのやり取りは幼馴染や兄妹のそれのようなのに、どことなく甘い気がして二人が去った教室は脱力する者が多数居たりする。
そんなことは知らない晴久と月子は正門で市たちと合流すると迎えの車に乗って去って行った。
「高嶺の花って、織田先輩のことだけどさ……」
「小野ももうすぐそれになりそうだよな」
「今更声を掛けるのも難しいもんなぁ……」
脱力から復活した男子生徒たちがそんな会話をしているのを知るのは、呆れた女子生徒達だけである。