第1章 砂漠の月00~70
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毛利家に新たな家族が出来たと聞き、寮に居た興元は新しい妹がだと心が踊る気分で実家に帰省した。
「あら、興元」
「母上、只今戻りました。元就は?」
「妹になった月子ちゃんと居間に居るわよ」
母の後を歩き、リビングに向かうと。ソファに座る弟と妹の姿が目に入って
おもわず、微笑みながら2人の頭を撫でる
元就と月子はソファの上で共に眠っていて、無性に構いたくなってくる
「…兄上か」
「おはよう、元就」
「大学は?サボった訳では無かろうな?」
「きちんと届は出してある、新しい家族に会いたくてな」
兄は月子に会いに来たかと納得した。
月子に視線を向けると、興元は嬉しそうに月子の頭を撫でる
うっすらと目を開いた月子は興元を見て首を傾げた。
「毛利興元、元就と月子の兄になる。宜しくな」
「はい…ええと、興元兄さん…?」
「良い子だ」
兄よ、妹が出来て嬉しさのあまりに抱き付くでない。月子がパニクっておるわ。
顔は元就に似ているが、嬉しそうに笑う興元を見て
元就と違う反応を見せられて顔を赤くして対応する月子も興元を兄と呼んだ。
夜、月子が作った料理を口に運んでいると。毛利家の母は元就が市と付き合ってるのを聞き、大いに喜ぶ。
「元就、結婚は早めがいいわよ」
「市の意見を優先する、急くでない」
「へえ、市姫と?いいなあ元就」
「ただいまー」
「「「「おかえり/なさい」」」」
「お、興元。月子に会いに帰ってたか」
「勿論です」
食事中、月子は「お母さん」「お父さん」「兄さん」「興元兄さん」と呼ぶ様に言われて
内心で苦笑いしつつも、皆喜んでくれて。
暖かい食事を囲んで家族団らんなんて何年ぶりだろう。
嘘の無い、優しい微笑みに嬉しくなって会話が弾んで。思い切り笑った。
この新しい縁を、大切にしなくては。
「兄さん」
「何ぞ」
「ありがとうございます」
このお礼は、色々と気に掛けて下さった事、認めて下さった事と
家族に迎え入れてくれた事。
たくさんのお礼を伝えると。わしわしと頭を撫でられた。
「其方は其方のままで居ろ」と言いながら。