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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


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新学期が始まり、月子は自分の苗字が変わったことをいつのタイミングで言えばいいのかわからず迷っていた。
学期始めはまず試験がある。夏休みの課題をきちんとこなしていればさほど難しくないもので、課題が終わっても復習をしていた月子は特に苦にならなかった。
周囲でブーイングが起こる中、淡々と試験をこなして結果発表の日が来た。

「おい……」
「えっ?!」
「まさか……!」

貼られた結果について、最初に気付いたのは月子のクラスメイトだった。
そのざわめきは徐々に大きくなり、月子がその場に着くと一瞬シーンとなった後またざわめき始める。
月子はその様子に苦笑しながら結果を見ると、学年9位に『毛利月子』という名前が書かれていた。

「月子」
「もっ……兄さん」
「ようやった。また順位が上がったな」

報告に行かなくてはと思っていたところで、背後から声が掛けられて月子が振り返ると元就が満足そうな表情で立っていた。
その少し後ろには市と晴久も居たが、貼られた結果にある月子の名前に驚き絶句しているようだった。

「兄さん、市先輩や晴久先輩にも本当に言わなかったんですか?」
「むろん。言えば織田にと言う可能性があったでな」
「うっ……それは……」

実際に理事長がそれを提案したこともあったりする月子は、流石に恐れ多いとフルフルと首を振ると元就が僅かに口角を上げながら月子の頭を撫でる。
大人しく撫でられる月子と機嫌が良さそうな元就に周囲のざわめきはいよいよ最高潮で、クラスメイトが声を掛けてこようとしたところで我に返った市と晴久が凄い勢いで喰いついてきた。

「元就! なんで市にも内緒だったの?!」
「俺にもだ! しかも、何考えてやがるっ!」
「喧しい! その話がしたいなら移動するぞ。ここは邪魔が多すぎる」

掴みかからんばかりの様子の二人に慌てる月子をよそにペチリと二人の額を叩いた元就が周囲で聞き耳を立てている月子のクラスメイトたちを睨みながら言う。
二人もハッとすると急いで人気のない場所へと移動した。
そうして入った空き教室で、改めて詰め寄る二人に呆れながら元就は口を開いた。
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