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砂漠の月

第1章 砂漠の月00~70


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もうすぐ新学期という日、この夏休み最後のお泊り会で月子は市の家に居た。

「月子ちゃん、夏休み楽しかった?」
「はい! 初めてのことがたくさんあって、市先輩たちともたくさん遊べて凄く楽しかったです!」

月子は食後からお風呂までの短い時間を市と二人で寛いでる所だった。
お風呂の準備をしながらの会話に月子は嬉しそうに答える。その首元にはネックレスが下がり、手首にはコテージから戻ってから常にブレスレットが着いている。
晴久が何かを言ったわけではなく、月子が気に入って常に着けるようになったのだが市は晴久がそれを見て嬉しそうに笑っているのを何度か見ていた。
だからこその月子への問い掛けだが、こちらも幸せそうで何よりだと微笑む。

「市先輩は楽しかったですか? 元就先輩とテーマパーク回ってたじゃないですか、どこに行ってたんですか?」
「えっ?!」

市は月子の様子が知りたかっただけだったが、無自覚に思わぬ返しをされて驚きに目を見開くと一瞬で真っ赤になる。
月子はその様子にきょとんとしたが、何があったのか気になり教えてくださいよと強請り始める。
市は始めは抵抗していたが、私のは見てたりしたのにと頬を膨らませた月子に降参して話すことになった。

「うぅ……恥ずかしい」
「私も恥ずかしかったです……」

見られたのは本当に恥ずかしかったと顔を真っ赤にして呟く月子に、そうよねと頷くと少しずつ話し始める。

「最初は、市、乗りたい乗り物があったからそれに行ったの。絶叫系ので、その……元就はあんまり好きじゃなかったみたいなのに一緒に乗ってくれて……」

市は思い出しながらポツリポツリと話し始める。
あの日もその乗り物は大人気で待ってる間、元就にしては珍しくたくさん話してくれていた。
市が気にしていたこと、気になっていること、元就がどう思っているか、市の気持ちが元就を全部受け入れられるようになるまで待つとは言われているが、少しでも早くなる努力は惜しまないということ。
事あるごとに、少しずつ市に話し、市の気持ちが追いつくのを待ってくれているのを感じて嬉しかったこと。
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