第1章 砂漠の月00~70
「俺は、別にお前置いてまで乗りたいのはないぞ?」
「でも……」
「お前が一人で回ってる方が心配で乗り物なんて乗ってられない」
「うっ……ほんとに、良いんですか?」
「おう。ほら、時間がなくなるぞ?」
はぐれると困るからと改めて手を差し出されて、月子は頬を染めながらその手を握る。
どこに行きたいのかと聞かれて月子は素直に行きたかったエリアの名前を言うとマップを確認した晴久が先導してそちらへ向かう。
途中で気になるショップがあると立ち寄ったり、大道芸人が曲芸をしているのを二人で見たりしながらエリアに着くと月子は目を輝かせてセットを見上げる。
「凄い! ほんとに映画の世界に入ったみたいです!」
「そうなのか?」
「はい! 晴久先輩、あっち! あっちに行きましょう! 映画の中で出てきたお店が再現してあって実際にお買い物が出来るんですよ!」
本当に好きなのか、月子が普段になくはしゃぐのを晴久は微笑ましげに眺め、落ち着けと宥めながら指を指す方向に歩き出す。
辿り着いたショップでも月子は繋いだ手を離そうとはせず、ゆっくりと中を眺め商品を吟味している。
「あ! これ本当に再現されてるのかな?」
「ん? なんだ、それ。グミか?」
「はい。ちょっと変わった味なんですよ」
「へぇ……買ってみるか?」
「うーん……食べれる気がしないのでやめておきます」
暫く眺めた月子はそう言うと品物を元に戻し、代わりに隣の商品を手に取るとレジに行くと伝える。
晴久は良いのかを確認してから、二人でレジに行く。
購入して次のショップに行くとそこは映画で出てきたアクセサリーなどが並んでおり、月子は買う気はないけど見てもいいかと問い、晴久が頷いたので眺めているとスタッフが寄ってきて晴久に声を掛けてきた。
「いかがですか? 彼女様にお似合いのアクセサリーなどプレゼントに」
「か、彼女?!」
「……あー、月子はなんか欲しいのあるのか?」
「え? い、いえ! そんなっ!」
「遠慮しなくて良いんだぞ?」
店員の言葉に声を出して驚いたのは月子で顔を真っ赤にしてわたわたしていたが、晴久は僅かに目を瞠った後何かを誤魔化すように月子の欲しい物を聞いて品物を選ぶように促す。