第1章 砂漠の月00~70
「市先輩、どうしたんですか? どっか怪我したりしたんですか?」
痛い? と心配そうに聞く月子に驚いたのは市と元就と晴久で、目を見開き月子を見る。
月子はどうしてそんな風に見られるのか分からず、不安で晴久を見ると無言で頭を撫でられた。
「月子ちゃんは、さっきの黒い手は怖くない、の?」
「黒い手ですか? しがみついてた黒い影じゃなくて、助けてくれた方?」
「うん……」
市が意を決して言葉を発すると、月子は更に不思議そうに首を傾げながら確認する。
市が怯えているのが何か分からず、月子は言葉を選ぶように視線を彷徨わせ答えた。
「怖くなかったです。あの黒い影は怖かったですけど、それを飲み込んでくれた闇? 影? は、なんか安心出来ました」
「安心?」
「はい、守ってくれるって思えたんです」
何ででしょう? と不思議そうに首を傾げる月子に、それを聞いた市が泣きそうな顔で抱きつくとありがとうと呟く。
ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、市先輩も怖い目に遭ったんですか?! と検討違いな心配をする月子に晴久と元就が視線を交わし頷き合う。
月子は分からないままに、一先ず帰ろうと促されて頷くとコテージに帰った。