第1章 砂漠の月00~70
晴久は月子の様子には無頓着で怪我をしていないかという確認に勤しんでおり、怪我がないことを確認した所で漸く真っ赤な顔に気付いた。
「どうした? 風邪引いたか?」
「い、いえ……」
「顔真っ赤だぞ?」
「っ、だっ、大丈夫です!」
大丈夫だから顔離してー! 近いー! と、内心の叫びは声にはならなかった。慌てる月子に不思議そうに首を傾げながらも、晴久は自分の荷物から風呂敷に包んでいたタオルを取り出した。
「これ、サンキューな。返そうと思って教室行ったんだがすれ違ったから」
「そ、んな……も、貰ってくれても、捨てて下さっても良かったんです、よ?」
「新品だろ? せっかく差し入れて貰ったもん、そんな風にしねぇよ。それに、毎回新品じゃなくてもいいぜ?」
「で、も……」
気持ち悪くなかったですか? そう聞いてしまいそうになった月子は慌てて唇を噛んだ。そして差し出されたタオルに困惑しながらも、晴久を見るとどう受け取れば良いのか判らず困惑する。
「あー……その、なんだ。聞いていいか?」
困惑顔で見つめる月子に晴久は頭を掻きながら口を開く。
ビクリと肩を跳ねさせた月子は、それでも覚悟を決めたような表情で小さくコクリと頷くと晴久から小さな吐息が零れた。
「お前が俺に構う理由ってなんだ?」
「え……?」
「俺とお前と接点なんてほぼないだろう? なのにこの間から構ってくるからなんでかと思ってな」
月子は拒絶の言葉を覚悟していたが、思っていたのとは全く違う言葉にきょとんとした表情で晴久を見た。
晴久の方は月子のその言葉に説明が足りなかったと思ったのか、問いかけた理由を付け足してくれていた。
ここは素直に答えるべきか迷った月子は、けれど自分の気持ちを言う勇気はなく迷った末にもう一つの望みを口にした。
「お、お友達になりたくてっ!」
「友達に?」