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三成さんと永利さん

第1章 三成さんと永利さん


36【完】

永利はうきうきとした表情で、今日は幼馴染に頼んで作って貰った美味しいシュークリームを手土産に三成の本丸を訪れた。
ゲートの前には不本意そうな三成とにこにこと嬉しそうに寄り添っている市が居て、遅い、と言われながら出迎えられた。

「そら悪かったわ。一応自分とこの仕事終わらせとかんと来れんし、堪忍。これ、土産」
「しゅーくりーむ?」
「お、知っとった? 味は折り紙つきの奴やから、茶菓子にでもしたって」
「ありがとう」

永利が差し出した手土産の箱を受け取ったのは市で、中を覗き込んで嬉しそうに笑うのを満足げに眺めて礼の言葉にどういたしましと返すと早速本題とわくわくした表情で三成を見る。
苦々しい、という表情の中に既に諦めの文字が浮かんでいるのが見え、永利はしてやったりと微笑んでから先に立って歩くその後ろ姿を追いかける。
嫌われてるわけではないが、まぁ、面倒ではあるんだろうなぁ……というのは永利の所感である。あるが、それを気にするような繊細な神経は持ち合わせていないので、受け入れられてる状態で引く気のないのもまた永利の悪い所とも良い所とも言えよう。
そうして案内された場所には既に蜻蛉切が座っており、どことなしか桜が舞いそうな雰囲気をしている。

「あー……うん」
「言うな。みなまで言うな。どうせ今から報告される」
「せやな、うん。とりあえず市姫の美味しいお茶を待つわ」
「そうしろ」

部屋に入ると緩む顔を割と必死に引き締めている蜻蛉切に生温い感情を覚えるのは致し方ない。人の恋路は聞くには面白いが、相方が居なければ充てられるのもまた然り……。
永利は僅かに遠い目しながらも、結果が判らなければ判らないでもっと気になるからまあいっか、とのんびり構えることにした。
暫くして市が刀剣男子の一人をお手伝いに永利が持ち込んだしゅーくりーむとお茶を持ってきてくれて、全員が一息ついた所で蜻蛉切から話が始まった。
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