第1章 三成さんと永利さん
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その日も永利は刀剣たちの出陣についてとある時代に降り立っていた。
永利――頼宮永利は審神者一年目の新米にして、少々変わった星の元に生まれたおかげで場数を相当数踏み込んでいるように見えるちょっと変わった男である。
神社の神主をしている祖父を持ち、父は継がなかったその血をしっかりとむしろ色濃いと言っていいほど受け継いだおかげでそこそこの霊力を保有している。
祖父からの英才教育とちょっとした事情により、その才は腐らせることなく揮われており実家の神社もとある方面ではそこそこ有名であったりする。
とはいえ、そちらはまだ祖父が現役であるため永利にはなんら影響はない。
「えーちゃーん! そっち言ったわよーっ!」
出陣のメインはあくまでも刀剣。経験値を上げるためにのんびりと見学していた永利は合戦場の方からかかった声に物思いから意識を戻すと目前まで迫った打刀のなれの果てだろうモノの刀を受け止める。
キーンッ! と、刃が交わる音が響き、ギリギリと圧し合う永利と敵の刀は拮抗を保つ。
「哀しいんかなぁ……苦しいんかなぁ……あるべき姿を見失うんは、辛いんかねぇ……」
「ウウッ――ガアアアァッ!!」
「哀れやねぇ……」
のんびりと永利が口にしたのは、何に対してか……。それに対して聞く耳を持たぬ敵の刀は拮抗した刀がピクリとも動かないことに焦れたのか一度刃を引いた。
その瞬間を待っていたかのように、永利は手にした愛刀を横に薙ぎ払い目の前の人形の首を撥ねその本体である刀の刃を真っ二つに折った。
すると落ち武者の様な姿をしていたそのモノはぐしゃりと目の前に崩れ落ち、時をかけずして朽ちてさらさらと風に舞い消えた。
丁度良く合戦場の方も決着がついたのか戦っていた刀剣たちが永利の方へと集まってくる。