第10章 大丈夫
「ここになんか書いて」
二宮くんは地方予選が始まる2日前に私に頼んできた
渡されたのはバッティンググローブという真っ白い手袋だった
愛花「なんでもいい?」
二宮「変なこと書かなければね」
愛花「ちょっとまってて、帰りまでに書くから」
大事な大会で使うのに
変なことは書けない
真面目に考えてから書こうと思った
愛花「これ、他に誰か書く?」
二宮「いや、愛花だけ」
愛花だけ、というのに少し優越感
何を書いたら頑張れるだろう
何を書いたら少しでも私を思い出してくれるだろう
いや、思い出したら邪魔か
思考回路がめちゃくちゃになりつつも
私は
「二宮くんなら大丈夫 One For All All For One」
と書いた
その下に
「応援してるよ」
とも書いた
これで頑張れるかどうかは別だけど
私の思ってることは書けたつもり
愛花「二宮くん、書けたよ」
二宮「お、さんきゅ」
愛花「ちょっと変かもしれない」
二宮「大丈夫」
そういえばなんで右手の分しか渡さなかったのだろう
愛花「ねぇ二宮くん」
二宮「ん?」
愛花「なんで右手だけなの?」
二宮「…教えない」
愛花「え、なんで?」
二宮「そのうち分かる」
怪しい。
まあいいや
二宮「もう明後日からかー」
愛花「早いね、信五なんて去年の今頃背番号もらえるように必死にやってたのに今ではピッチャーだよ」
二宮「信五はうまいからね」
愛花「うるさいけどね」
二宮「あ、そういえばさ」
愛花「はい」
二宮「ミサンガ、キャッチャーミットにつけてるよ」
二宮くんの誕生日にミサンガをプレゼントした
そのミサンガをキャッチャーミットに付けてくれてるらしい
愛花「ほんと?」
二宮「お守りだから」
愛花「そんなこと言うんだね二宮くんも」
二宮「どこまで冷たいやつだと思ってんのお前」