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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第2章 二ヶ月目の戦い


 そういうわけで、私は松野家にご厄介になり幸せに暮らしております。

 では一松さんと恋人になった私の、ラブラブな生活の一部をお見せしましょう!

 …………

その1:『写真』

 窓から午前の爽やかな日差しが差し込んでいる。

「古いものとか色々ありますね、お母さん」
「思い出の品が多いから、つい取っておいちゃうのよねえ」

 今日は休日なので、押し入れの片付けを手伝っていた。
 狭い家に居候が一人増えたので、色々整理せねばならんのだ。

「手伝ってくれてありがとうねえ、松奈。本当に助かるわ」
「いえいえ、これくらい当然のことです、お母さん」
「松奈に比べてあいつらと来たら。親の手伝いもせんで」
「まあまあ、お父さん。お兄さんたちは私に本当に優しくしてくれて――」

 私はお二人の前で『よく出来た優しい娘』をアッピール。
 そして押し入れの物を出していると、何やら分厚い表紙の本が見つかった。

 ん? 違うな、本じゃ無い。取り出してみると、
「おお、懐かしいな。うちのアルバムじゃないか!」
 お父様が懐かしそうにそれを取る。
 確かに、よく見るとハードカバーのアルバムだ。
 表紙も無地にただ『ALBUM』とだけ箔押しされた無骨なもの。
 最近のオシャレ&可愛いフォトアルバムの主流から外れた、古めかしい作りだ。
 いや、実際に古いものだな。背表紙が少しはがれ、台紙もかなり黄ばんでいる。
 お父様のお小さい頃のものだろうか。お父様はニコニコと、
「見てごらん、松奈。兄さんたちの小さい頃の写真だよ」

 ……え。

 写真を見ると、間違いなく六つ子の小さい頃のもの。
 見分けがつかない同じ顔が六人、笑ったり遊んだりしている。
 こんなアルバムは世界中探しても、松野家以外に存在しない。

 だがそれよりも。

「ぜ、全部白黒写真なんて、その、ずいぶん愛好家なんですね。お父さん」

 六人のお兄様方の幼少の写真と言うことは、これが撮られたのは平成。のはず。
 なのに白黒写真とは硬派な。

「そうでもないよ。あの頃はまだカラーフィルムが高かったからなあ。会社の初任給なんて――」
「このアルバム、お借りしますね!!」

 地雷原に自ら足を踏み込む前に、私はアルバムを分捕った。

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