第8章 派生④カラ松END
段ボールだらけの部屋、カーテンをしていない窓。
カラ松さんは新しい部屋の窓辺に立ち、誇らしげに微笑む。
「いい部屋を借りられたな、ハニー。実家にも近くて安心だし、俺たちの愛の巣も確保出来る。完璧な場所だ!」
「どこがですかっ!!」
「ぐはっ!!」
後ろからカラ松さんを蹴りつける。
手すりから落ちそうになるカラ松さんに、さらに蹴りを入れようとしていると、
「松奈ー! これ、母さんからだってー!!」
十四松さんの声がして、
「え? ちょっと待っ――」
窓の向こうから何かが投げられ、慌てて受け取る。
……何やらピンク色の液体に満たされた容器。深くは考えるまい。
そっと押し入れの奥にしまいカラ松さんを引き上げるべく、窓辺に行くと、
「松奈! 本当に大丈夫? 手伝いに行こうかー!?」
チョロ松さんが向かいの窓から手を振ってきた。
「ノーセンキューっす……」
私たちの新しいアパート。その真向かいに、松野家がある。
一年の間にあれやこれやがあり松野家の向かいが新築アパートになった。
カラ松さんはそこに部屋を借りたのである。
実家の真ん前とか、意味不明すぎるしっ!!
だが本人は独立気分。お母様も大喜びであった。
「いいんですか、これで……」
カーテンだけ速攻で取り付け、どうにかプライバシーを確保する。
そしてご機嫌なカラ松さんに蹴りを入れようとする。
「わっ!!」
「俺はどこだろうと、何だろうと幸せだ。愛しいハニーがそばにいてくれるのなら!」
畳の上に押し倒され、ため息。で、カラ松さんは、
「ハニー。さっそくだが……」
うん。この一年の多忙と実家住まいで、ヤルものもヤレなかったですしねー。
「いや、真っ昼間で、お向かいにご兄弟がいらっしゃる状況でヤリたかないですよ!」
「マイキティ……愛してる……」
カラ松さんの顔が近づいてくる。
「いーやー」
「お楽しみのとこ悪いけど」
ガラッとふすまを開け、一松さんと十四松さんが入ってきた。
『わっ!!』
私たちは速攻で離れた。一松さんは舌打ちし、
「クソ松。おまえ、浮かれて全然、買い物終わってないだろ。
俺たちで買い出し行ってくるから。松奈、買い物メモ作って」
「は、はい!!」
大慌てで起き上がり、台所に向かった。