第7章 派生③おそ松&チョロ松END
冷や汗が流れる。何か開き直っちゃってるけど。
まさかね。チョロ松さんが私なんかに、本気とか……まさかね。
「それじゃ」
と、チョロ松さんは立ち上がり、部屋から出て行った。
私は遠ざかる足音を聞きながら呆然とし、ハッと我に返る。
「いやいやいや! 散々やりまくっといて全っ然! 説得力ないですからね!?」
届かないであろうツッコミを入れたのであった……。
…………
ひどい夢にうなされ、汗びっしょりで目を開ける。
「はあ、はあ……」
窓の向こうにはお月様。まだ深夜らしい。
身体がやけに痛い。身体がすぐ動かない。
よく見ると自分で自分の身体を抱きしめ、丸くなって寝ていた。センザンコウか。
「ん……?」
まだ違和感が。腕を解いても、身体が上手く動かない。
おかしいな。金縛り……?
「松奈?」
耳元で声が聞こえ、驚く。
「もう少し寝てなよ。まだ全然早いって……」
あ?
ここはホテルではない。開放感ある和室。寝ているのはせんべい布団、そば殻の枕。
見えるのは木目の天井に日焼けした畳……。
松野家の私の家じゃ無いか。じゃあ今の声は――。
誰かに後ろからがっちり抱きしめられていた。
私はゆっくりと、ゆっくりと後ろを向く。
「目が覚めた?」
この軽い声は、間違っても私の恋人の声ではない。
一松さんと同じ顔ではあるが……あるが……。
「――――っ!!」
「静かにしてなよ。皆起きちゃうって」
手で口をふさがれなければ、家中に響き渡る悲鳴をあげているところだった。
いや、むしろ皆、起きろ!! この犯罪者を地の果てまで連れて行けっ!!
いったい人の部屋に夜這いして、何をやってたんだ、クソ長男っ!!
そしてなぜか着乱れているんだ、私。
パジャマの前ボタンは全部外れてるし、下着がずり落ちかけてるし!!
「ごめんね。部屋を間違えちゃった。松奈も寝相が悪いね」
ニヤニヤニヤ。
全力で抗議したいし、出来れば殴りたい。
が、皆を起こしたくない気持ちもある。
あと眠いし。最近、眠りがかなり浅くなっているのだ。
「そ、そうですね。気をつけます。おそ松お兄さんも、もう寝ぼけないで下さい」
疲れた笑いで、流す意志を示すとおそ松さんは笑い、やっと布団の外へ出る。