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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第5章 派生①一松監禁END



 ベッドで抱きしめあい、ヒソヒソと話をする。

「寒い?」
「くっついてれば暖かいから大丈夫ですよ」

 布団を重ねまくって、裸でくっついてるけど、でもホントは寒い。
 寒さを声に出さないようにし、一松さんを抱きしめる。
 暖房代とか、意外と馬鹿にならない。少しでも節約しないと。

「松奈は優しいね。もっと色々言われるかと思ってた」
 一松さんが私にチュッとキスをし、笑う。
「何でです? 何から何まで、面倒を見ていただいてるのに?」

「逆でしょ。何もさせてもらえず、ずっと閉じ込められてるから」

「そうですね。では今から路線変更をし、野外で開放的に交合――」

「何でそうなるの。出さないからね」

 コツンと叩かれる。あう。
 最近はそんな風にふざけあうけど、もう、カゴの戸が開けられても私は逃げない。
 一松さんも分かっているから冗談に応じてくれる。

 でも一松さんは手錠も鍵も止めない。もう習慣化してるのかもしれない。
 手錠や鍵をしないと不安なんだろう。


 私の方も、監禁生活が長すぎて、最近は外に出るのが怖い状態だ。
 引きこもりの長期化と心理状況が似てるかもしれん。

 一松さんは私を閉じ込めてないと、私は閉じ込められてないと、精神が安定しない。

 あれ、これが噂に聞く共依存って奴?
 そこまで病んでると思わないけど、マヒしちゃってるのかなあ。

 でもこの状況を変えたいとは全く思わない。
 なぜなら、これが私たちが見つけた幸せの形だからだ。
 薄氷の上の幸福ではあるけどね。

「一松さん……」
 寝ようとしてる一松さんに話しかける。
「ん? どうしたの?」

「いつか全てが行き詰まって、どうしようもなくなったら、私を殺してほしいんです」

「…………本気?」

 鼻で笑うのでは無く、何も考えなくていいとなだめるでも無く、そう言った。

「そんなことになったら松奈を外に出して、俺だけ責任を取ろうかと思ってたけど」

「カゴの鳥を外に出して、一羽だけで生きられるワケないでしょう」
 エサの取り方も知らないというのに。

「最悪、兄さん達に預けようかと思ってたんだけど」

「全員就職、結婚しちゃってるかも。子供までいるかもしれませんよ?」

 それで松野家に住んでられたら、居場所が無いってレベルじゃない。

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