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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第3章 三ヶ月目のさよなら



「あれから色々調べてみたら、実は何と! 私は橋の下で拾われた子と判明いたしましてっ!!」

「へー。大変ザンスね」

「で、なんやかんやでこっちに戻って来れました」
 イヤミさん。グラスを拭く手を止め、私をジーッと見る。

「一番省略しちゃいけないとこを省略してないザンスか?」
 えー? 話さないといけない? 本当は話しちゃいけないんだけど~。
 仕方ない。説明したくは無いが、説明せねばなるまい。
 困苦の末に取り戻した、驚愕の真実を!!

「実は元々、私はこっちの世界の人間で、異世界に行ける能力者だったのです。
 赤ちゃんのとき、事故から自分を守るため力を使い、あちらの世界に行っちゃったんです。
 本来なら一生戻れないところを、一回こっちに引き戻されたため、こちらの座標軸を把握出来ました。
 で、三ヶ月かけて能力を復活させ、この街に戻ってこれました」

「シェーっ!!」

 例のポーズを取り、グラスを放り出して――あ、ガチャンと割れた音――こっちに食ってかかる。

「何ザンスか、そのオチは!! ぶん投げるにも程があるザンスよ!!」

 そう言われても、マジなのである。

 ホントに私はこっちの住人で、自分の超能力で帰ってきました☆

 ……まあ、本来なら一生思い出さないことだったんだろう。

 でも、あっちの世界のあれやこれやで四苦八苦しつつ、こっちに戻ろうと、あがいてあがいてあがいた末に、自分の能力を思い出せたのだ。

 まさに『愛の奇跡』と言えましょう!
 
「別世界に行こうとしない限り、私は普通の人間です。
 それにこの力は、もう一生使わないですよ。回数制限があったりしたらヤバいし」

 しかし、これからが大変なんですよな。

 役所には死亡扱いされてるだろうし、『本当の』両親のお墓参りにも行かんといけない。
 親族の人とかいるのかなあ、戸籍を戻す手続きとか超面倒そう。
 まあこっちの世界だからいいか。


『向こう』と違って、ほど良くいい加減に出来てるし、何とかなるでしょ。

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