第2章 二ヶ月目の戦い
「二人も来れば良かったのに。トト子ちゃん、新しいファンが増えてすごく喜んでたよ!」
ファンにされている! あれバイトだから!! つきあいだから!!
でも一松さん。憧れの幼なじみより、私を手伝う方を選んでくれたんだ。
とか思っていると、十四松さんがヒョイッと廊下に顔を出して、
「あ、松奈の分もトト子ちゃんのグッズ、買っておいてあげたよ!」
「……は? ええ!? 今、何てっ!?」
慌てて居間に駆け込むと、あるわあるわ、一個ン万円もするぼったくりグッズの数々がちゃぶ台に並べられているっ!!
「トト子ちゃん、支払いは来月末まで待ってくれるって!」
「でもいくら俺たちの幼なじみだからって、ここまで買わなくてもいいのに」
「松奈は本当に良い子だね!」
「いいいいやいや、私、買うとは一言も――」
まさか……。
ハッとして、十四松さんを見る。
彼は私を見ていない。
『これで良かった?』と確認を取る顔。
その視線の先は――私の後ろ、一松さん。
チラッと後ろを振り返ると一松さんは、ニヤリと笑って十四松さんに親指を立てていた。
……謀(はか)られた。
私の視線に気づいても一松さんは悪びれた風もなく、私に近づき、肩にポンと手を置き、悪辣な笑みで、
「支払い、頑張ってね」
悪魔が笑っていた。
というわけで一ヶ月余りで稼ぐべき金が、三百十万程度に増えたのでした。
死ぬ。
…………
…………
朝。
パチッと目が覚め、大きく伸びをする。
「……て、足が……足が……っ!!」
足がつって布団の中でしばしもだえ、改めて大きく伸びる。
「……ん?」
得も言えぬ不快感。まあいいか、と起き上がる。
「よっしゃー! 今日も一日、がんばりますよ!」
……身体を伸ばすとまた激しい不快感。ダルい。全身の関節が痛い。
寝不足か運動不足かなあ。
まあ、働いてるうちに元気になるっしょ、と廊下に出る。
……風が痛い、いや何というか、空気が肌を刺すというか。
何か変だなあ。でもやることは山ほどある。
現在時刻は午前六時。
お父様とお母様がご旅行中の今!
六人のお兄さん達が起きる昼までは、私が松野家の支配者である。
自分の朝食をすませ、七人分の洗濯をし、掃除をすませ、六人分の朝食を作る!!