第2章 二ヶ月目の戦い
…………
で、その日の午後も大変だった。もうバイト探しどころじゃない。
研究所は、借金取りによって徹底的に荒らされていた。
マジで何をやってるんだ、デカパン博士。
元に戻せばいいだけなら簡単なんだけど、壊されすぎて全部破棄するしかない場所も多い。薬品類は危険なので時間をかけて慎重に処理。
ゴミを片付け床を掃いて、やっと一スペース終わり。
大きな棚が横倒しになっていたりすると、それを直すだけで一時間は食う。
いや本当に、何で私がこんなことを……。
全ては元の世界に帰るため、私を必死に探し、帰りを待ってるだろう、愛する家族に会うためだ。
しかしこの作業とは別に三百万が必要なことも徒労感を強める。
疲れた……。
…………
本日の作業を切り上げ、出てきたら夕方だ。
今日はお母様のパートが早く終わる日なので、ちゃんと夜までに帰らなきゃいけない。
「はあ」
遠くでカラスが鳴いている。
「もう、どうすればいいんですか!」
夕暮れの公園のベンチで頭を抱えていた。
だがグズって金が降ってくるわけでもなし。
お母様の夕飯のお手伝いに取りかからねば。
「あ、いけない! お肉を買い忘れてましたっ!」
私は頭を切り換えて立ち上がり、足早に商店街に急いだ。
…………
半時間後。
ガランガランと鐘がなる。
「特賞大当たりー!! 熱海ペア旅行券、出ましたー!!」
「は?」
だがハッピを着た係員さんや順番待ちの人たちは拍手してくれた。
何が起こっているかと言えば、福引である。
お肉を買ったら、福引券がついてきたので、抽選会場に行ってガラガラを回したら大当たりが出た。
商店街の福引。
清酒やしょうゆ、みりんという微妙なラインナップ、そして一等がなぜか桐タンス。
だが皆は長蛇の列で並び、福引券を握りしめ桐タンスを狙っているらしい。
謎の多い町だ。
「うーん……」
買い物袋片手に、特賞の旅行券を手にして悩む。
一松さんと旅行☆
「無理無理無理、絶対に無理」
理由を考えるまでもなく、否定の言葉しか出ない。
六つ子がいるし、わざわざ一人と旅行に行く理由をひねり出すのも面倒だし。
それならば。