第2章 二ヶ月目の戦い
『心配して損した』って!!
さっきとテンションが真逆ですよ、この男。むしろ上機嫌!?
協力する気、ハナからゼロだ!!
「帰りますからね。絶対に帰るからっ!! 大事な家族に再会出来ないってすごく――」
「うんうん。寂しくなるねえ。バイト探し、頑張って」
鬼かっ!! いや、まだチャンスはある。なんたってあと一ヶ月以上あるのだ。
三百万くらい余裕で!!……余裕、で……。
「明日も出かけようか。どうせ暇だし」
敵は底意地の悪い笑みを浮かべていた。
暇なのはあなただけだ!!
…………
…………
数日後。
ようやく一松さんがご兄弟と遊びに行ったので、自由に行動することが出来た。
博士の研究所に行き、裏口の鍵を開け、研究所に入る。
「うわあ。本当に荒らされてるし」
私が来たときは、しゃれたオフィスのような小ぎれいな場所だったが、今は色んなものがひっくり返され、物が散乱している。
けど速やかに転送装置の準備をしてもらうため、片付けるしかない。
でも女一人で広い研究所を片付けるとか、無理ゲーすぎる。
「これじゃあ、とても足りないですよね」
持ってきたゴミ袋(20枚入り!)と軍手片手に肩を落とす。
危険物も多そうだし、軍手でも危険かもしれない。
しかも午前中に家事をして、午後に研究所の片付け。
合間合間に、一松さんからのお誘い。
たまに他のご兄弟からの遊びのお誘い。
……お金を貯める暇、なくね?
絶望感がじわじわと心を侵食する。
「か、片付けなきゃですね!」
何とかなる。きっとなる。夢はあきらめなければ、叶うもの。
一人寂しく、私はゴミを袋に入れだした。
…………
「あ」
『あ!』
研究所の片付けは、とにかく重労働であった。
そしてヨロヨロで帰る道すがら、六つ子に出会った。
「松奈ー!!」
十四松さんが手を振る。人なつこく抱きついてくるのを、さりげなくかわしつつ、
「どこ行ってらしたんです?」
「パチンコ! ちょっと勝ったから、これから飲みにいくんだ!!」
こいつら……私が半日重労働にいそしんでいたというのに。
「ん? 松奈、ちょっと匂う?」
クンクンと匂いをかいでくる十四松さん。失礼な!!