第8章 カミングアウト
アスマを木ノ葉の里まで送り届けた後、アジトへ向かいながら四尾の人柱力のことを考えていた。
彼を助けることが出か来なかったことを悔やんでいた私は、あることに気づいてしまった。
(私はきっと、彼が死んでしまった事が本当に悲しい訳じゃない。)
私が原作上で死ぬ運命にあった命を助けたいと思った理由。
それは、誰かに私の秘密が知られたときに、知っていたなら何故あの時に死ぬはずだった奴を見殺しにしたのかと、そう思われるのが嫌だったからじゃないのだろうか。
私の行ってきた綺麗事は、ちょっとふたを開ければ汚い思惑で溢れていた。
『…今さらか。』
落ち込みながら呟いて、足を止める。
(もしこの世界に来ることができたなら、すべての悲しみを肩代わりしたいと思ってた…。
それは自分がどう思われようと、どれだけ不幸になろうとかまわないと思っていたから。)
あの時の私はすべてを諦めていた。
幸せになることすらどうでもいいと。
そこからそんな自己犠牲見たいな考え方が生まれてきたのかもしれない。
だけど本当は…。
(自分が幸せになれないから、だれかを身代わりに幸せにしようとしてたんだ。)
その証拠に、最も私が望んだのはうずまきナルトが〝両親に愛され〟共に生きること。
私が望んだのは両親に愛されること。
似ていると思ったのだ。
本当は、辛いのに笑う彼が、辛くても夢にも向かう彼が、独りだった彼が。
彼が幸せになれば、私も幸せになれると思ったのだ。
(そうだ…私はただ、彼を幸せにするためだけに命を懸ければいい。)
結局、行きついた思考がそれだった。
けれど先程までとはうってかわり、一気に視界が開けた気がした。
私は再び足を動かし、アジトへ急いだ。
まだやらなくてはいけないことが沢山ある。
ここで止まっているわけにはいかないのだ。