第6章 切り捨てと救済
「尾獣が抜かれる直前でなくてもいいんじゃないのか?」
疑問を口にした君麻呂に私は首を横に振る。
『私たちも暁と同じ抜け忍だから人柱力に攻撃されかねない。
それに、二尾の人柱力は一旦私達で保護するつもりだから暁にやられてからの方が都合がいいの。』
そう説明してから、何より、人柱力と戦って消耗した暁と戦う方が楽だし、と付け足す。
それから私は明日戦うことになる暁の二人の特徴と能力を説明した。
「そんなことまで分かるのか…。
それにしても随分な能力を持ってるな。」
君麻呂は真剣な表情で呟いた。
『二人を殺す必要はないから、もし危険だと思ったら人柱力を連れてさっさと逃げよう。』
私がそう言うと、君麻呂は薄く微笑んだ。
「殺す必要が無いんじゃなくて、殺したくないんだろ?」
どうやら、この数年で君麻呂は私の事をだいぶ理解してくれていたようだ。
まあね、と同じように微笑み返した。
翌日、暁と人柱力の戦闘がある場所が分かるかという私の心配を他所に、轟音がその場所と開始を告げた。
『君麻呂!』
私が名前を呼ぶと、彼は分かったと言うように頷いた。
音源のすぐ近くまで行くと、漫画で見たことのある二人組と一人の女性が戦闘を繰り広げていた。
(二尾の人柱力って女の人だったんだ…)
私は暁と必死で戦っている人物を見て少し驚いた。
人柱力は何となく男ばかりだと勝手に思っていたからだ。
彼女はしばらく二人と凄まじい戦闘を繰り広げていたが、とうとう追い詰められた。
ぐったりと動く力をなくした人柱力に暁が近づく。
その瞬間、私は君麻呂に合図を送った。
『雷遁・螺旋丸!』
私は螺旋丸に雷の性質変化を加えたものを右手に出現させると、暁と人柱力の間に突っ込んだ。
人柱力は君麻呂が抱えて避難している。
「何だぁ!?」
暁の片割れ、飛段が突然の襲撃に声をあげた。
『悪いけど、尾獣狩りは阻止させて貰う。』
君麻呂が人柱力の女の人を抱えこの場から去ったのを確認した私は、飛段と角都に向かって宣言した。