第1章 夢と現実
"ルミちゃん!ルミちゃん!"
暗闇のなかで私を呼ぶ声がした。
その声に気づいた瞬間、呼吸が苦しくなる。
(私を起こさないで…そっちに連れ戻さないで…)
私は無意識にそんなことを考えた。
"お願いだから起きてよォ"
その声は震えながら私を呼び続ける。
私はその声に意識が引っ張られる感覚と、息苦しさを同時に感じた。
さっきまでは闇のなかで、意識だけが存在していて、肉体から解放された感覚だったはずだった。
それが、今は生々しい息苦しさに教われている。
(静かにして!)
私は思わず心の中で叫んだ。
その瞬間、声は止んで息苦しさも治まる。
と言うより、呼吸そのものが必要ないものになった気分だった。
だが、ほっとしたのもつかの間で、私の意識は何かに引きずられるように闇の中から引き上げられた。