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私は貴方に恋をした

第1章 私は貴方に恋をした


楓は少し考える仕草で朱里の言葉に返事を返していく。いつでもかっこよく見せていたいのは、女性が可愛く見て欲しいと思う欲求とさほど変わらないと思っている。
しかし、どうやっても朱里には納得できないものらしい。拗ねてとがらせていた唇が引っ込むと、代わりの様にぷぅっと頬が膨らんだ。
楓は思わずくっと喉を鳴らすと膨らんだ頬に唇を寄せてはむっと食いつく。もちろん、痛くない様に加減はしているが、突然のことに朱里は首をきゅっと縮めた。

「あのね、俺が嫉妬してるように見えないのはきっと朱里のおかげなんだよ」
「わ、たし?」
「そう。朱里が、こうやって嫉妬してることを素直に伝えてくれたり、いつも全身で俺のこと好きって伝えてくれてるから他の野郎が寄ってきても安心してられるの」
「そ、れは、お出かけした時、も?」
「うん。だって朱里、知らない男が近づくと俺を探して不安そうな顔するだろ? 頼られてる、依存されてるって思えて気分いいよ」
「……じゃ、あ」
「もし、朱里の同級生とか仲がよさそうな男が傍に来て、朱里がそんな様子見せなかったらきっと嫉妬に狂っちゃう……それくらい、朱里が好きだ」

楓が仕方がないなぁ、と言いたげに、けれど嬉しそうに笑って告げる言葉に朱里はきょとんとした表情を見せた。
言われた言葉を理解するにつれ、その頬は徐々に朱に染まっていくが視線は逸らされない。
楓は甘い笑みを浮かべたまま背に添えていた手を片方持ち上げると朱里の頬に沿わせ、ゆるゆると撫でながら朱里が理解できるように自分の気持ちを吐露していく。
じっと見つめ合った視線は不安そうなものから徐々に戸惑った様な、期待しているような、そんな視線に移り変わっていくのを見つめ笑みを深めると。
最後の一言は唇を耳元に寄せ、内緒話をする様にそっと大切に告げる。フルリと身体を震わせた朱里が、肩に回した手できゅっと服を掴むのと寄せた顔を少し戻して楓がちゅっと軽く唇に口付けるのとは同時だった。
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