第18章 【リヴァイ】残り香とあなた
リヴァイはある部屋の前に居た。
ノックをすれば、弱々しい声が聞こえる。部屋に入って彼女の姿をベッドに見つける。
「調子はどうだ」
ドアを閉めて声を掛け、よく見れば泣いた跡がある。
「・・・大丈夫です」
「・・・そうか」
「兵長・・・なぜ毎日様子見にいらっしゃるんですか。お忙しいでしょう、私みたいな下っ端に構っている時間は無いのでは・・・」
「9人だと思われた生存者が、1人増えた。それがお前だ。兵団にとってこれ以上無い朗報だ。それに部下の面倒を見てやるのも上司の仕事だしな」
リヴァイはサラの腕を見る。兵団、という言葉を出したが、サラはもう兵士として戦いに参加することは難しいだろう。
エルヴィンも同じ腕を巨人に食われ、戦闘することは出来なかったのだ。
「腕はどうだ」
「・・・大丈夫です」
「にしてはガキみたいに夜泣きが多いみてぇだが」
「それは・・・違います、腕は大丈夫です」
「なら、死んだはずの奴の匂いがするのと関係があるのか?この部屋だけだが・・・亡霊でも出て怖がって泣いてやがるのか」
リヴァイが問えば、僅かに「しまった」という顔付きをしたサラをリヴァイは見逃さなかった。
「何故奴の・・・エルヴィンの匂いがする」
するとサラは、シラを通すでも無く、枕の下から小さな瓶を出した。
「・・・これです」
「香水か」
「はい・・・エルヴィン団長の使用していたものと同じものです。団長の特注だそうで、いつかの壁外調査前に分けて頂いたんです。・・・手元にはもう、これだけしかありません」
「お前・・・好きだったのか、あいつが」
香水から目をサラに移すと、サラの瞳からは止めどなく涙が溢れ出していた。答えを聞くまでもなく、リヴァイは小さくなり震えるサラの背を撫でた。