第14章 〇【エルヴィン】 前 日
「君がずっと好きだった。彼・・・いや、ご主人にも負けない位にね」
「何?急に・・・」
「本当に他の男の物になると思ったら、ね」
「・・・もう・・・ずるいよね・・・。せっかくお別れの気持ち作ったのにさ・・・。最低だよ、本当に・・・」
自分の気持ちをサラに伝えたのは、これが最初で最後だった。
そしてサラを見送る為に2人で玄関へ向かう。
靴を履いて、エルヴィンに渡されたビニール傘を手にしたサラが振り返る。
「エルヴィン」
「ん?」
「私も好きだった、エルヴィンのこと。・・・今まで、ありがとう」
「・・・ああ、こちらこそ。ありがとう」
扉が閉まる。
扉を振り返る彼女の瞳に浮かんだ涙。
それに気付かない振りをして、鍵を掛けた。
-END-