第14章 〇【エルヴィン】 前 日
雨の降る夜。
今夜は来ないであろう、いや、この場に居てはならない彼女を黙って見つめたまま立ち尽くしていた。
「・・・サラ、何故来た」
「・・・中に入れて」
彼女はサラ。
ある日から体の関係を持ち、そして昨日、3年という長くも短い月日を終わりにしようとしていた。
彼女は明日、結婚する。
「中には入れない。昨日も言ったはずだ、もう会わない、と。君と俺は、もうこうして会うことは許されない」
サラの濡れたシャツが肌にまとわりつき、伏せ目がちな瞳に、今すぐに部屋に引っ張り入れてめちゃくちゃに抱いてしまいたい衝動に駆られる。
サラがエルヴィンを見る。
「・・・最後、最後にする。これで本当に終わりにするから・・・」
ダメだ。
そう考えるエルヴィンの頭とは別に、体はサラの身体を引き寄せてきつく抱き締めてキスをしていた。