第6章 ある夏の一日
「ヒカリ!!」
「大丈夫?!ヒカリちゃん!」
まだ座り込んだままの私の元に、凛さんと江先輩が駆け寄ってきてくれた。
「立てるか?どっか痛めてないか?」
「ほらヒカリちゃん、掴まって」
「あ、だ、大丈夫ですよ!一人で立てますから・・・っっっ!い、いった・・・!!」
江先輩が手を差し出してくれたけれど、心配させないように一人で立ち上がろうとした。さっきは足首に痛みが走ったけど、多分そうひどくないはず。気合いを入れればこれぐらい・・・そう思ったけれど、ダメだった。さっきよりも強い痛みが足首に走って、再び私は倒れ込んでしまった。
「お前、足怪我してんじゃねえか!」
「ここ・・・!すごい腫れちゃってる・・・!」
痛みが走る足首に目をやれば、凛さんと江先輩の言う通り、普段の倍ぐらいにそこが腫れ上がってしまっているのがわかった。突き飛ばされた時に捻ってしまったんだろう。その上、何もしていなくてもズキズキと痛んでくるようになってしまった。
「い、いえいえ!ご心配なく!ちょっと休めばすぐ歩けるようになりますか・・・きゃああ!」
だけど、心配させたくなくて痛みを堪えながら笑顔で江先輩達にそう言った時だった。突然、私の身体がふわりと宙に浮き上がった。
「・・・俺が家まで運んでく」
「や、ちょ、ちょっと!お、降ろして下さい、宗介さん!」
私の背中と膝の裏に宗介さんの腕が添えられていて。いわゆる『お姫様だっこ』で、私は宗介さんに抱き上げられていた。
「ダメだ、嘘つくな。相当痛えんだろ?お前の顔見ればそれぐらいわかる」
「っ・・・で、でも・・・」
「・・・無理して取り返しがつかなくなったらどうすんだ」
宗介さんの瞳がじっと私を見つめてくる。宗介さんの声はとても静かだったけれど、だからこそ痛いぐらいにその言葉は私の心に響いてきた。
「・・・は、はい。わかりました・・・で、でも、その・・・これじゃ恥ずかしいから・・・せめておんぶにして下さい・・・」
「ああ、わかった」
私がそうお願いすると、宗介さんは静かに頷いてくれた。