第6章 ある夏の一日
「美味しかったですね!お料理もデザートも!」
「うん!あ、でも私、お腹いっぱいでちょっと苦しいかも・・・」
「私はまだまだいけますよ!」
「えぇ?!ほ、ほんとすごいね、ヒカリちゃん・・・やっぱり身体鍛えようよ!そしたらヒカリちゃんにもものすごい筋肉が・・・」
「そ、それは無理だと思います・・・」
あれからゆっくりとご飯やデザートを食べて、おしゃべりをした私と江先輩は、今お店の裏手で宗介さんと凛さんが出てくるのを待っていた。凛さんが『じゃあそろそろあがるな』なんて言ってお店の奥に消えて、すぐに会計してお店を出たから、10分ぐらいで宗介さん達出てくるかな、って思ってたけど・・・
「うーん。お兄ちゃん達なかなか出てこないね」
「そうですね。何かあったんでしょうか?」
20分が経過しても宗介さんと凛さんは現れなかった。時間が来たからってすぐにパッと帰れるわけじゃないし、着替えとかもあるから時間がかかるのはわかるけど・・・
「もう一回お店に入って聞いてみようか」
「はい、そうですね」
私が思ってたことを江先輩が言ってくれた。こんなに時間がかかるとやっぱりちょっと心配になってしまう。江先輩と一緒に、お店の入り口の方へ向かおうとした時だった。
「ねえ、彼女。きみ、すっごく可愛いね!」
「これから俺達とどっか行かない?」
若い男の人二人組が江先輩に声をかけてきた。お店の裏手は駐車場にもなってるから、きっと食事を終えて車に戻ってきた人達なんだろうと思う。
「い、いえ。私、人を待ってますので・・・」
「えぇ〜?!それって彼氏?」
「いえ、兄ですけど・・・」
「ならいいじゃん、行こうよ」
断っているのに男の人達はしつこく江先輩に食い下がる。
「あ、あのっ!私達、本当に人を待ってますので!!」
「ヒカリちゃん!」
考えるよりも前に言葉が口から出ていた。こういう時ってなるべく大きな声できっぱりと言ったほうがいいはず。
「あ・・・きみもいたんだ。えーっと妹さんかな?」
「俺達今、お姉さんに用事があるんだ。もう夕方だし、小学生はおうちに帰りな?ね?」