第3章 きみに会えてよかった
「・・・まあでもお前さ」
「はい?」
しばらく宗介さんの優しい手の感触に身を委ねていると、また宗介さんが少しからかうような口調で言ってきた。
「くれぐれも誘拐されたりすんなよ」
「へ?!さ、されませんよ、誘拐なんて」
「だってお前『お菓子買ってあげるからついておいで』とか言われたら、ついていっちまうだろ?」
「い、いきませんよ!子供じゃあるまいし!」
「はっ・・・どうだかな」
宗介さんの趣味って私をからかうことなんじゃないだろうか、そう思わせるぐらいには、いつもいつも宗介さんは私をからかってくる。いくら私だって、いついかなる時も食べ物に釣られるわけじゃないのに。
「もう!私のこと何だと思ってるんですか?!宗介さんのばか!」
「おい、ヒカリ。んな怒んなって」
「もう宗介さんなんて知らない・・・」
私は宗介さんからぷいと顔を背けた。もう頭撫でてくれたって許してなんてあげないんだから、と決意を固める。
「・・・・・・・・・おい、ヒカリ」
「・・・」
「飴あるけど、食うか?」
「え?!わあ、ありがとうございます!・・・あ」
「ぶはっ!っははははは!!」
・・・ああもう最悪だ。なんで反応しちゃったんだろう。私の食いしん坊。これはもう、宗介さんしばらく大笑いコースだ。
「っっ!わ、笑わないで下さい!!」
「はははは!ほら、飴やるから怒んな」
「怒りますよ!・・・あ、でも飴はもらいます」
「ぶはっ!!」
「も、もう!笑いすぎです!!」
「ヒカリ・・・そろそろ機嫌なおせ」
「・・・いやです」
・・・散々笑い転げておいて、今更何を言ってるんだろう。あれから、たっぷり5分ぐらい宗介さんは笑い続けた。宗介さんの笑顔は大好きだけど、やっぱり許せない。
「・・・飴、うまいだろ?」
「・・・・・・美味しいです」
「・・・はっ!」
・・・また笑ってる。
膨らませた頬の中で、ころころと飴を転がす。いちご味なところが余計に腹立たしい。