第3章 きみに会えてよかった
「・・・・・・」
「はっ・・・しょうがねえなあ・・・っと」
「へ?・・・っきゃああ!」
そろそろ私も機嫌をなおさなきゃいけないのわかってる。だけど、ここまで来たらタイミングがわからなくなってしまって、そっぽを向き続けていた。そしたら急に身体がふわりと浮いて、気付いたら私は宗介さんの脚の間にいた。
「あ、あの・・・宗介、さん・・・?」
「・・・これでもまだ機嫌なおらねえか?」
「んっ!」
後ろからそっと宗介さんの腕が回ってきて、私の身体を包み込む。
「なあ・・・ヒカリ」
「っっ!!」
そして、私の耳元、吐息がかかりそうでかからない、そんな距離で宗介さんが囁くように言う。
「っ・・・ど、どうせ食い意地張ってますよーだ・・・」
・・・どうしてこんなに可愛くない言い方しちゃうんだろう。本当はもう、さっきまで怒ってたことなんてどうでもよくって、宗介さんに身体を預けて甘えちゃいたいのに。
「はっ!そうだな・・・・・・でもまあ、それでよかったんじゃねえの?」
「へ?」
どうしてまたこういう時に笑うかなあって少しムッとしかけたら、宗介さんの言葉には続きがあった。ほんの少しだけ、宗介さんの声に照れくささが滲んでるのを感じる。
「お前が水泳部入ってなかったら・・・・・・会えなかっただろ?・・・俺ら」
「宗介さん・・・」
私を抱きしめている腕に少しだけ力が込められる。顔は見えないけれど、宗介さんが今どんな顔をしているのか、私にはなんとなくわかる。
・・・食いしん坊が理由だって構わない。遙先輩達、水泳部のみんなに会えてよかった。色々まだ失敗してしまうこともあるけれど、いつだってあたたかく見守っててくれる先輩達が好き。頑張ってる先輩達と・・・そしてこれから入ってくるかもしれない後輩達を、これからも応援していきたい。
そして・・・・・・宗介さんに会えて本当によかった。
出会い方は最悪だったけど・・・きっとどんな出会い方をしてたとしても、私は宗介さんに恋してたと思う。
ぱっと見、身体が大きくてぶっきらぼうで怖い感じだけど、実は結構照れ屋で、意地悪なところもあるけど、本当はとっても優しくって。いつだって私を包み込んでくれる、そんな宗介さんが今もこれから先もずっと大好き。