第3章 きみに会えてよかった
「・・・」
・・・どうしよう、ぷるぷると身体が震えてきてしまった。
そして、そんな私に『ハル』先輩は不安そうな眼差しを向ける。
「・・・嫌い、だったか?」
「いえ!!とんでもない!すごく・・・すごく嬉しいです・・・!!」
「そ、そうか・・・」
勢いこんで言うと、『ハル』先輩はびっくりした顔になったけど、その後少しだけ笑ってくれた。
・・・水泳部・・・すごい・・・!!みんな、なんっていい人達ばっかりなんだろう・・・!!!
「お疲れ様でーす!・・・って、あれ?あなたは・・・」
私が尚も感動にうち震えていると、部室のドアがバン!と開いて、ポニーテールのとっても綺麗な女の人が入ってきた。リボンは赤、2年生だ。
「ああ、江ちゃん。この子はね・・・」
『まこと』先輩が事情を説明してくれようとする。だけど、その『ごうちゃん』という先輩は、急にガシッと私の肩を掴んできた。
「入部希望者?!1年生?!名前は?!」
「きゃああ!あ、あああ、えっと・・・長島ヒカリです・・・」
驚きのあまり、肝心なところは否定しないまま、名前だけ答えてしまう。
「ヒカリちゃんね!水泳はいつから?専門は?ブレ?バック?バッタ?フリー?」
「は?!や、あの、えっと・・・えっと・・・」
『ごうちゃん』先輩は一体何を言っているんだろう?
バッタって昆虫の?フリーって何?自由?
とにかくもうその勢いがものすごくって、私は何を言っていいのかわからない。
「ちょ!江ちゃん!」
「落ち着け、江」
やっとのことで、『まこと』先輩達が止めに入ってくれる。そして、未だに興奮している『ごうちゃん』先輩に事情を話してくれた。
「・・・なんだ。そうだったんだ、残念・・・・・・」
「う・・・す、すいません。それに私、バタ足で5メートルしか泳げませんし・・・」
『ごうちゃん』先輩はなんだかとてもしゅんとしてしまって、申し訳ない気持ちになってしまう。だけど、小学生並みにしか泳げない私が水泳部なんてやっていけるはずがない。
「・・・・・・」
「へ?あの・・・先輩?」
『ごうちゃん』先輩は何か考え込むような表情になって、じっと私を見ている。