第3章 きみに会えてよかった
「そっかー。渚と怜なら確かにうちの部員だから、ここで待ってるといいよ。もう少しで来ると思うから」
「はい、ありがとうございます・・・あ!あの、これ・・・お礼のつもりで作ってきたんですけど、先輩達もよろしければ食べて下さい」
それは昨日帰ってから感謝の気持ちを込めて作ったマドレーヌ。自分でも味見したし、クラスの友達にも食べてもらって美味しいって言われたから、大丈夫なはず。
「え?いいの?うわぁ~、美味しそう。ヒカリちゃん、だったっけ?すごいね!料理上手なんだね」
「い、いえいえ!そ、そんなたいした物では・・・」
ベタ褒めされて、更にさらりと名前を呼ばれて、一瞬ドキッとしてしまう。
「ううん、すごいよ。ほら、ハルも見て」
そう言うと、背の高い先輩は、今までずっと黙っていた黒髪の先輩に、私が持ってきた袋の中身を見せた。
「・・・ああ。俺はこういうのは作らないから・・・すごいな、お前」
ハルと呼ばれた先輩は寡黙に見えたけれど、とってもストレートに褒めてくれて。まるで水のように澄んだまっすぐな瞳に見つめられて、またドキッとしてしまった。
「あ!お返しっていうのもあれだけど・・・これ、あげる」
水泳部の人達、なんだか色んな意味ですごいなあ、なんて思っていたら、背の高い先輩がブレザーのポケットから包みを取り出した。ガサガサと開けて中を見ると、そこには美味しそうなスルメがあった。
「またもらったのか・・・真琴」
「うん。田村さん、俺を見るといっつもくれるんだよね・・・あ!もしかしてスルメ、嫌いだった?」
「いえ!そんなことないです。とっても美味しそうです。ありがとうございます!」
心配そうに私の顔を覗き込んでくる『まこと』先輩に、私はにっこり笑ってお礼を言った。
・・・『まこと』先輩。とっても優しそうだし、お礼にスルメをくれるなんて、なんていい人なんだろう・・・!
「そういうことなら俺も・・・これをやる」
そして、『ハル』先輩もごそごそと鞄の中を漁り出して、缶詰を私にくれた。
「昨日安売りしてたから買っておいたんだ。お前にもひとつやる」
「買っておいたって・・・うわ!鞄の中、鯖缶まみれ?!」
「・・・出すの忘れてた」
「は、ハルぅ〜〜!!」