第3章 きみに会えてよかった
(う~ん、どうしよう・・・)
あの後、腹ごしらえをして無事に復活した私は、帰りの電車に揺られていた。
部活と言って外に出ていったのだから、『なぎさ』先輩と『れい』先輩は運動部のはず。そう思ってグラウンドを隈なく探してみたけれど、あの二人の姿はどこにもなかった。
ちょっと怖いけれど、明日2年生の教室を回って探すしかないかなあ。あんなに優しくしてもらっておいてお礼も言わないなんてダメだし、食べ物の恩はきちんと返さないと私の大食いとしてのプライドが許さない。
だけど・・・今になって、あの『れい』っていう先輩の顔がなんだか引っ掛かる気がする。最近、本当に最近、どこかで見たような気が・・・・・・
「・・・あっ!!!」
電車の中なのに、思わず大きな声を出してしまった。近くにいたのが居眠りをしているおばあちゃんだけでよかった。
・・・思い出した。あの人、岩鳶祭の部活対抗リレーで、アンカーで走ってた人だ。水泳部なのに、まるで陸上部みたいに綺麗なフォームですごく速くて、みんな盛り上がってたんだ。
・・・でも、水泳部かあ。新入生歓迎会で『チャームポイントは何々筋だ!』とか言って、筋肉紹介してた人達、だよね。あの時はちょっとひいちゃったんだけど・・・
・・・ううん!食べ物をくれる人に悪い人なんていない!それに話しかけてもらった時の雰囲気がすごく優しくてあったかい感じだった。親切にしてもらったんだもん。明日、ちゃんとお礼しに行こう!
そう私は心を決めたのだった。
「し、失礼しまーす・・・」
翌日の放課後、私は水泳部の部室を訪れた。ノックをすると『はーい』という返事が聞こえたので、恐る恐るドアを開ける。
「あ、あの!いきなりすいません。私、1年の長島ヒカリと言います。えっと・・・」
そこには昨日の先輩達はいなかったけど、代わりに3年生の男の先輩が二人いた。とりあえず挨拶をして、事情を話そうとすると・・・
「もしかして入部希望者?!」
背が高い先輩の方が、ものすごい勢いで走り寄ってきた。その勢いに押され、少し後ずさりしてしまう。
「きゃ!!・・・い、いえ!違います!実は・・・」
びっくりしながらも昨日のことを話す。すると、その先輩は残念そうな顔になったけど、わかってくれたみたいだった。