【刀剣乱舞】不死身審神者が死ぬまでの話【最強男主】
第1章 神の初期刀・前編(加州清光、大和守安定編)
何だろう、緋雨がとても大事なことを言っているような気がする。けれど許されたという事実が清光から考える意欲を奪っていくようで、彼が口にした「過去」とやらについて、もっと詳しく聞こうという考えがすっぽりと頭から抜け落ちてしまっていた。
「私は、そうしてお前たちとの間に溝を作らざるを得ないことがとても心苦しい。本当は何もかもを打ち明けて、寄り添って、不満など何一つないようにしてやりたい。私が普通の人間だったらそういうことも出来たのだろうかと思うと、本当に情けない気持ちになるんだ」
情けないだなんてそんな、と清光は思った。そうして自覚してくれていると、知れただけでも嬉しいのに。あなたがこの気持ちを分かってくれているだけで十分なのに。この美しいひとにそんな痛ましい感情を植え付けていると思うと自分にまでその思いが染みてくるような錯覚を覚える。
「私は強い刀が欲しいのではない。美しい刀が欲しいのでもないよ。皆を愛しているのは、それぞれに良いところが、愛すべきところがあるからだ。どの刀も一辺倒に接しているように見えるだろうか。生憎私はそんなに器用ではない」
そんな言葉までもらってしまってはもうたまらなかった。つぶれたカエルのような嗚咽が漏れて、緋雨の背中まで回した腕にぎゅうっと力がこもる。張りつめていた糸はぷっつりと切れてしまい、一気に襲ってくる安堵にまた涙が溢れ出てくる。
「うう、ぁ、あるじ、ぅ」
「よしよし、可愛い清光。可哀想な清光。お前のその不安も、愛に飢える心も、私はちゃんと分かっているし、愛しているよ。安心しなさい」