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その花の名は、

第2章 就任初日




甲冑を外し、上着とニットも脱げているものの、ネクタイがはずせなかったのか首元で可哀想なことになっている。ワイシャツもぐちゃぐちゃだし。

首締めないように気をつけないと。
ネクタイを緩め、そっと外す。ワイシャツのボタンを外すと程よく筋肉のついた素肌が露わになった。

ワイシャツの下に下着つけない派なのかな。

『あ!丁度いいからお風呂入っちゃおうか!』

まんばちゃん着替え持ってるし。
タオルは脱衣所にあったし、お湯もそろそろはれたはず。
私は彼の手を掴み、廊下をぐいぐいと進む。

「おい、お風呂ってなんだ」

『お湯に浸かって、1日の疲れを落とすところだよ』

「刀の焼き入れみたいなものか」

『知らないけど、たぶん違うと思う』

お風呂場に着くと、お湯もいい具合にはれていた。

『じゃあ、脱いで。その布もね』

「これは、駄目だ」

彼は布をぎゅっと掴む。
正直その布、出会った時から剥ぎ取って洗濯したいと思ってた。ズボンも破けてるし、縫いたい。

『お風呂はいる時は衣類身につけて入っちゃ駄目なの!決まりなの』

と、少々圧をかけて言うと、明らかにしょんぼりした。

「人間って大変だな」

そんなに大事なのか、その布。
取る気がなさそうなので、脱衣所の棚からバスタオルを持ってきて彼に渡した。

『代わり。頭被ってて』

そういうと、恐る恐る布を取ってくれた。
人の身体を得たのは今日とはいえ、大きな赤ちゃんを相手にしてる気分だな。

彼の前にしゃがんで、彼のズボンに手を掛けるとまんばちゃんに手を握られた。

「ズ、ズボンくらい自分で脱げる」

顔を上げると、まんばちゃんが顔を真っ赤にしていた。釣られて、私も顔が熱くなるのを感じる。
側から見れば、完全に痴女である…。

「ご!ごめん!!」

慌てて手を離し、お湯加減見てくるからと言ってお風呂場に駆け込んだ。

全然、大きな赤ちゃんじゃなかった。
そうだよね、付喪神だったんだし、なんとなくの知識くらいあるよね。ボタン取って、ファスナー下ろすだけだもんね。

出来るよね。自分が恥ずかしい。
高校生みたいな男の子に、することじゃないよね。



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