第7章 明智光秀【アケチーミツヒデ】
十参號は『』として幸福に生きている………
そう自然に受け入れられる様になった頃、唐突に思い掛け無い話が舞い込んで来た。
十参號を嬲り尽くした奴等が撫で斬りにされた…と。
国攻めを受けた訳では無い。
大名共だけが不自然に命を落とし、然もその屍は筆舌尽くし難い状態であったらしい。
そんなの……俺にはどう考えたって十参號の仇討ちとしか思えなかった。
いや、あの狡悪な彼奴らの事だ。
十参號以外にも多方面から恨みを買っていただろう事は容易に想像出来るが……
それでも、小国とは言え一国の大名一族をあっさりと撫で斬りにして仕舞える程の力と策を持っている者なんて……
自ずと答えは見えて来る。
信長では無いだろう。
信長であればこんな薄気味の悪い方法は取らない筈だ。
正面からはっきりと「『』の仇討ちである」と知らしめるだろう。
だから当然、信長の指示を受けた訳でも無い誰か……という事になる。
その下手人について、信玄様も俺も同一人物を想定はしていたが、敢えてその『男』について語り合いはしなかった。
……………明智光秀。
さっくりと殺して仕舞う事だって出来た筈なのに、態々時を掛け嬲り尽くしてからの撫で斬り。
恐らく十参號が受けた苛虐と同様の行為を繰り返したんだろーな。
俺だって彼奴らが十参號にした事を赦す心算は更々ねえ。
出来れば俺の手で殺してやりたいと何度も何度も考えたよ。
でも、あの人間の所業とは思えない行為を全て見ていた俺は………
その行為を遣り返されて、苦しみ、叫び、赦しを乞う。
そんな彼奴らの姿態に薄ら笑いを浮かべる明智光秀を想像して……不覚にも背筋が凍った。