第6章 織田信長【オダーノブナガ】
そして天主の中へ戻って行った信長が、『』と何か遣り取りを交わしてからまた直ぐに張り出しへ戻って来た。
「俺が、必ず…………。」
誰かに言い聞かせる様にそう呟いた信長は張り出しに何かを置くと、今度こそは褥に戻った様だ。
信長と『』の寝息が聞こえるまで待って漸く動き出した俺が目にしたのは、張り出しに置かれた一房の髪だった。
誰の髪かなんて考えるまでもねえ。
そして信長が其れを誰に渡そうとしているかなんて、更に丸分かりだ。
その髪を手に取って、天主の中へ目を向けて見れば………
信長と『』は生まれたままの姿で寄り添い、お互いを抱き締め合って眠っている。
そんな二人の姿に目を細め、俺は手にした髪に唇を寄せてから大事に懐へ仕舞うとそのまま安土を後にした。
信玄様の元へ駆け戻りながら俺は考える。
自分の懐に手を当てて
「此れ……俺と信玄様と、半分ずつだよな?」
そう呟く俺の顔は満面の笑みを浮かべていたんだ。