第4章 罪悪滔天【ザイアクトウテン】
……………それだけだったんだ。
結局、俺は射精しなかった。
いや、出来なかったって言う方が正しいのかもな。
十参號を想って自分で慰めたり、夜鷹を抱いた時には猿みてーに何度も吐き出した癖にさ……
でも俺を受け入れて笑う十参號を見たら、もう充分だった。
兎に角早く、十参號をこの理不尽な痛みから解放してやりたくなった。
一物はまだ見事な迄に勃起している。
だけど俺はもう射精するよりももっと大きな欣悦を手に入れたんだ。
…………自分の中の何所かで、『兄』と『妹』としての歯止めが掛かったのかもしれねえが。
そして十参號の中から一物をずるりと抜き出す。
赤く染まったそれを目にして自分がどれだけ酷い事をしたのかと思い知ってから、俺はもう一度十参號を包み込む様に抱き締めた。
「捌號……あの…」
「良いんだ。」
何かを言い掛けた十参號を窘め、その綺麗な額に口付ける。
「このまま眠ろう。
朝まで、ずっと俺の腕の中に居てくれ。」
もう何も言わず俺の胸に身体を寄せてくれる十参號の髪に顔を埋め瞼を伏せた。
そんな俺の腕の中で、十参號は何度も何度も同じ事を囁き続ける。
「私……忘れないよ、今夜の事。
絶対忘れない……
忘れないから………」