第3章 慧可断臂【エカダンピ】
十参號に駆け寄り、その細い肩を掴んで振り向かせてから抱き寄せる。
「行かせねー。
信玄様の所になんか行かせて堪るかよ。」
「んっ……」
十参號が苦し気に身を捩っても、俺は構わずぎゅうぎゅうとその小さな身体を力一杯抱き締めた。
「お前が他の男に抱かれるなんて耐えられねえ。
お前は俺の……俺だけのもんだ。」
…………もう良い。
もう構うもんか。
俺は十三年間自分を雁字搦めにして来た箍を完全に外した。
俺は外道だ。
ああ、奈落の底でも地獄でも…何処にだって堕ちてやるさ。
だけど………
人間を救って下さるという如来様か、菩薩様か……どっちだって構やしねー。
一層の事、八百万の神全てに願うから……十参號だけは見逃してくれ。
此奴は知らねーんだ。
俺が『兄』だって事を。
永遠の無間地獄に堕とすのは、『妹』と知ってて十参號を抱く俺だけで勘弁してくれ。
ここまで覚悟を決めて仕舞えば、怖れる物なんか何もねえ。
そこにはもう抑え切れない程に育って仕舞った猛獣にも似た淫欲があるだけだ。
俺は十参號の項を掴んで上向かせ
「お前が俺を求めたんだ。
逃げんじゃねーぞ。
十参號……お前も覚悟を決めろ。」
その桜桃の様な愛らしい唇を激しく貪り始めた。