第1章 秘中之秘【ヒチュウーノーヒ】
『捌號と十参號は兄妹みたいだな』
皆がそう言う。
でも俺は……
十参號の事を『妹』として見た事なんか一度も無かった。
………もうずっと、昔から。
「おい、十参號。」
俺にそう呼ばれて十参號は視線を反らしてから僅かに眉を寄せる。
そう…お前の顔に鬱陶しさが滲み出ている通り、俺が今から語るのはお小言だ。
「お前、最近弛んでねーか?
昨夜も怪我してただろう。」
「大した怪我じゃないから心配しないで……。」
「そーゆー話じゃねーよ。
お前の心配云々の前に、あんな弛んだ仕事をされちゃ
俺達全員の命取りになるかもしれねーって話だ。」
お前の怪我が掠り傷程度で済んで、胸を撫で下ろしてるのは事実だ。
でもそんな甘やかす様な事は口が裂けても言えねえ。
俺はお前を一人前の三ツ者に仕上げなきゃならねえ立場だから。
十参號は悔しそうに唇を噛んで俺の顔を睨み付けていた。
その苛立ちは俺にも痛い位に分かる。
ここ最近の十参號は頓に伸び悩んでいるからな。
ガキの頃は男も女も無く、同じ様に同じだけ成長する事が出来た。
だけど十五を超えた辺りから男と女では身体付きだけじゃなく、当然身体能力だって差が広がるばかりだ。
決して十参號が鍛錬を怠っている訳では無い。
寧ろ三ツ者の中でも一番と言って良い程、努力しているだろう。
それなのに俺達男と同じ様に動けない自分に嫌気が差しているんだ。
そろそろ……限界なのかもしれない。
十参號も女としての仕事を覚える頃合いなのかもしれない。
だが……俺は……