第9章 あの子。【青峰 大輝】
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青峰大輝と出会ったのは、中学生の頃だ。
出会った、と言っても、私がただ見ていただけなんだけど。
私立帝光中学。
その近くの女子中に通っていた私は、帝光中にものすごいバスケプレーヤーがいることを知らされた。
名前は──『青峰大輝』。
抜群のセンスと実力。
圧倒的なスピードと野性的なプレー。
『キセキの世代』と言われるほど。
初めて公式試合を見たとき、瞬きをしなさすぎて泣いてしまったほど、私は見入ってしまっていた。
『‥‥‥え、桐皇行くの?』
『うん!』
『‥‥‥青峰見たさに?』
『うん!』
『‥‥‥おめでたい頭ねホント』
未だにあれが褒め言葉なのか嫌味なのか分かっていない。
だけど、誰になに言われたっていいのだ。
私は、彼に会う。絶対に! 会ってみせる!!
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「‥‥‥──っていうのが成り行きで~」
「ははぁ」
今日もまた、桜井くんと勉強会。
今日は部活がないから、と少し余裕をとってくれた。
なので、私の青峰くんに対するキモいほどの熱意を聞いてもらっていたのだ。
「あ、青峰くん‥‥か」
「へ?」
「あ、いや、す、スミマセン‥‥!」
「え?」
「あ、青峰くんは見た目とはうって変わってすごい性格してますよ」
‥‥‥すごい、
「‥‥性格?」
こくり。と頷く桜井くん。
会って話してみればわかる。そう告げられた。
‥‥‥────どうやって話せと!!?!?
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「青峰くんどこだか知ってる?」
「あれ? いつもの屋上じゃないの?」
「居なかったんだよね~‥‥」
あの子だ。
カチカチとシャーペンの芯が出てくる音に混じって、可愛らしい声が聞こえてきた。
──桃井さつき、ちゃん。
女の私でも惚れてしまいそうになるほど、容姿端麗でスタイル抜群。
あれだけ可愛ければ、そりゃあ青峰くんだって惚れるよね‥‥‥。
‥‥‥勝ち目がないことは分かってる。
でも、そんなことじゃない。
勝ち目がないから挑まない訳じゃない。
──だけど、私は彼を知って2年、同じ高校に入ってしかも同じクラスなのに‥‥‥
‥‥‥半年でやっと名前を言えたくらいだ。
この先、どうなるのかなぁ‥‥‥。