第8章 毎日恒例 【黄瀬 涼太】
「もう喧嘩続きなんスよぉ~」
「仲悪ぃのかよ」
「そうじゃないッス!」
「黄瀬くんが乙女心分かってないんじゃないですか」
「あぁ、それあるな。つか俺も乙女心とか分かんねぇから青峰あたりに聞こうぜ」
「青峰くんは乙女座ですが乙女心とは無縁の男です」
「乙女心・・・っていうか、あっちが男心を分かってないんスよ」
「・・・そっちか」
「お節介っていうか、なんていうか・・・もうこのままだと母親になりそうで嫌ッス!!」
「なるほど」
「恋人が親みたいなのは嫌ッスよね!?」
「好きな奴だったら普通」
「ですがちょっとだけウンザリするかもです」
意見が分かれた。
「火神っち心広いんスね~」
「火神くんは小姑みたいなうるささに免疫ないでしょ」
「喧嘩売ってんのかお前」
「売ってません」
「まぁまぁ」
小姑・・・小姑って、そういえば・・・
「それで、つい『小姑みたい』って言っちゃったんスよ」
「それはダメです」
「それはダメだな」
「ハモった!?」
そんなに!?
「女子はそれ言われたら傷つくんじゃねぇの?」
「同感です」
ガーン!!!
そういえば・・・ユキミっち泣いてたかも。
やっぱり、傷つけてたんスかね・・・?
脳裏の奥の方でユキミっちが振り向いた。
その顔は、時々見せてくれる笑顔。
そうッスよ、喧嘩はするけど・・・好きなことに変わりはないんス。
「・・・言いたいことは、言わなきゃダメッスよねぇ」
「あ!? 黒子お前俺のチーズバーガー食ったろ!!」
「食べてないです」
「口にケチャップついてるけど!?」
「二人とも話聞いてほしいッス!! っていうか火神っち頼みすぎ!!」
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『どうすればいいのか分からない』
『は?』
『黄瀬に電話かけて音信不通とかになってたら怖い』
『だから今までも電話かけようとしなかったのか』
『うん』
ポンポンとメッセージが飛び交う。
メッセージアプリ【LIFE】で笠松と話すのは久々だ。
『大丈夫だよ 多分』
『でももし切られたら!?』
『黄瀬はそんなことしねぇよ 多分』
『態度はっきりしてるじゃん…』
『好きな女には違うって 多分』
『さっきから多分ばっか!』
他人事だと思って・・・いや他人事だけど。
このやろ。