第7章 INTOXICATION 【灰崎 祥吾】
自分でもビックリするような言葉が飛び出る。
「・・・オレが迎え行って、途中まで送ってく。これでどうだ?」
「・・・・・・・・・いいの?」
俯いていた顔が、ゆっくり明るくなっていく。
満面の笑みになったそいつは、オレにまた繰り返す。
「ありがとう」
────ストンと何かが落ちてきた。
───────---
その日から、オレとユキミの不思議な生活が始まった。
部活をサボって、校門であいつを待つ。
バイトの日はバイト先まで、家直行の日は、家のすぐ近くまで。
最初は取り巻き女も着いてきていたが、オレの姿を見た途端、そそくさと逃げていった。
とある日はファミレスに寄った。
ユキミの家で飼っている犬の名前も覚えた。
『戌』と書いて『ジュツ』と読むらしい。
「ネーミングセンス大丈夫かァ?」
「私じゃなくてお母さんがつけたの」
そしてまたとある日は、マジバでお互いの中学の頃の話をした。
まぁ、オレの中学時代なんて大したもんじゃねぇが、あいつは興味津々に聞いてくれた。
「へぇぇ・・・それって、染めたんだ・・・」
「あぁ、髪な。おう、高校デビューってやつ」
「銀髪見てみたかったなぁ。レアじゃん、銀髪」
「ジジイってバカにされるから染めた」
「・・・・・・確かに」
そうやって毎日毎日いっしょに帰る度に、オレはそいつに染まれていった。
実はむちゃくちゃドジで間抜けで天然ボケだってこと。
付き合った人数は未だに0だということ。
よくオレの髪を弄りたがるということ。
普段は大人びてるくせして、実はものすごく寂しがり屋だということ。
知っていくうちに、侵食されていった。
「灰崎くん」
が、いつのまにか、
「灰崎」
って呼び捨てになって。
自分でも驚くほど、それを自然に受け入れていた。
だが、オレの女遊びは止まってはいない。
遊び、というか、剥奪だ。
誰かのものを奪うのは心底気分がいい。
オレが女遊びをしていること、あいつも知っている。
最初の頃は、
「あーそういう顔してるもんねぇ」
と言っていたが、
「ほどほどにしなよー?」
が最近のあいつの口癖だった。
ヤキモチ妬いてほしいとかじゃねェ。
オレの自然な行為なんだ。