第7章 INTOXICATION 【灰崎 祥吾】
「・・・・・・は!?」
フリーズしていた目が、パチリと瞬く。
その瞬間、マシンガンのような言葉のシャワーが降りかかった。
「ななな何言ってんのアンタ!?
え、な、え、・・・え!?」
その後いくつか同じような言葉を繰り返された。
が、
この様子からして、こいつ・・・処女か?
「どうなんだよ」
「・・・・・・・・・教えないし」
「その反応、図星かァ?
・・・分かりやすすぎだろ、お前」
「お、教えないって言ってるでしょ!?」
いやいや、教えてるようなもんだろ。
動けない足のせいで離れたくても離れられず、バシバシと胸板を叩かれる。
腰を撫でる度にビクつく体がたまんねェ。
「そーかァ、処女かァ。
・・・そういや、熱下がったのかよ」
「・・・ねつ・・・」
叩いていた手が止まり、考え込むように目が瞑られる。
・・・下がったんだな。
「・・・あ、そうだ、知恵熱! だったの!」
「・・・はァ? 知恵熱?」
「考え込むと頭痛くなって熱出るんだよねぇ」
典型的なバカ発言だけど、まぁ流しといてやる。
「治ったならもういいけどよォ」
「ふふ・・・優しいんだねぇ」
ありがとう、と。
久しぶりにそんな言葉を言われた。
「・・・別に」
「って、そうじゃなくて! 足! 退かしてよ!」
またバシバシと叩かれ始めた。
「さっきのあの女、何なんだ?」
「・・・・・・あー・・・はは、助けてもらっちゃったねぇ、ごめんね」
「謝んなくていいから。何なんだよ、アイツ等」
少し話し辛そうに眉を歪ませて、そいつは口を開いた。
「私、女子高に通ってて・・・」
まぁ、見りゃ分かる。
「それで・・・なんだか分かんないけど気に入られちゃって」
女子高あるある・・・なのか?
「バイトにも押し掛けられたし、家まで着いてこられたし、もう・・・参っちゃうよねぇ」
所謂、同姓ストーカーってやつ?
珍しいもんだな。
「今日はバレないように帰ろうと思ったんだけど・・・見つかった。
・・・助けてくれてありがと」
向日葵とも違う、薔薇とも違う、ほんわかしたような笑顔だった。
「・・・ストーカーって・・・やべえだろ」
「うん、でも・・・友達だし」
「そんな友達必要かァ?」
要らねぇだろ。
だが・・・こいつにとっちゃ大事なのかもしれねぇ。