第6章 幸せな家族 【虹村 修造】
「---───はぁぁぁぁぁ・・・」
深々と溜め息が零れる。
まだリビングで雑誌を読んでいた修造を他所に、先に寝室に来た。
まだ心臓がドクドク言っている。
(なんか今日変だよね、にじむー。
やっぱり悩みでもあるんじゃ・・・)
仕事? まさかリストラ?
・・・いや、それだったら呑気に雑誌なんか読んでいないだろう。
出張? ありうるかもしれない。
・・・それか・・・──
「───倦怠期」
自分の声が木霊する。
部屋じゃなく、心の方に。
「・・・・・・マジで!!!!?」
自分で言ったのにも関わらず、不吉な未来を想像してしまって身震いした。
そういえば、まだ中学生の頃・・・
『わたし、その・・・処・・・じゃないし』
と恥ずかしさで死ねそうな告白したとに、彼は言っていた。
『そんなの、これから上書きしてけばいいだろ』
──上書きがあったか。
高校生の頃に1度だけそんな行為をしたが、それきり。
何も言わないから何かしようとも思わなかったが、それが倦怠期の前兆だったとしたら?
・・・嫌な汗が滲んでくる。
そんな邪念振り払おうとしたが、もし本当にそうだったとしたら、黙っているわけにもいかない。
「・・・・・・っ」
(──よく、考えたら・・・それって、離婚、ってことだよね?)
勿論、修造のことは好きだ。
家族としても、一人の男性としても。
だが、修造自身がそうでないなら・・・
・・・馬鹿みたいだ。
黙っているわけにいかない、と思ったが、黙っていたい、とも思った。
こんなに幸せな生活に終止符を打たなくちゃいけないなんて・・・
「───泣いてんのか」
「!!」
突如、後ろから声が聞こえてきた。
啜り泣く声が漏れていたのか・・・その人物は迷わずはちにそう告げてきた。
「・・・今度はどうしたんだよ」
「・・・っ」
言えない。言いたくない。
自分から幸せを逃すようなこと。
「・・・おい」
「言いたいこと、あるなら言って」
「は?」
振り向かない。振り向けない。
声で分かるほど泣いていたのだ。顔はもうグシャグシャだ。
「何言って、」
「泣きたくなるに決まってんじゃん!!!!」
「!!」
今きっと顔を見たら・・・安心してしまう。
それじゃダメだ。修造にも悪い。
自分の体にムチを打った。