第6章 幸せな家族 【虹村 修造】
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「お風呂ー沸いたよー」
「おー」
皿洗いを終えた修造は、そのまま脱衣所へ向かう。
風呂場の中で、まだ チョコマカしているはちに後ろから声をかけた。
「・・・風呂」
「あー、ちょっと待って」
「・・・入るぞ」
「だからぁ・・・・・・・・・は!?」
思わず詰め替え用のシャンプーを取り落とす。
「あああシャンプーーー!!!!」
「早く拾え!」
ドクドクと溢れ出すシャンプーを処理しているなか、はちの心臓もドクドク鳴っている。
何故って・・・、ロマンチックの欠片もないうちの旦那が、一緒に風呂に入ろうと言ってきたからだ。
「・・・に、にじむー? 熱?」
「んなわけあるか」
「ええ・・・」
なら、どうしたのか。
グルグルする頭の中で、必死に答えを探していた。
「・・・いいから、入るぞ」
「え、ちょ、ぬ、脱がなっ、え、えぇ!?」
咄嗟に後ろを向いてしまう。
一緒に風呂、なんていつぶりか分からない。
「い、いい! やることあるし!」
「皿洗いならやっといた」
「っ」
そうだ・・・さっきまで、
「にじむーが皿洗いしてくれたら、今日はもう終わりなのになー、あー」
と叫んでいたのを忘れていた。
なんという不覚・・・頭を抱えた。
「おら、早くしろ。脱がすぞコラ」
「く、口悪ッ・・・
・・・!! じ、自分で脱げますから!」
本気で脱がしにかかりそうだった。
修造を浴室に追いやって、そそくさと脱ぐ。
緊張と困惑でどうにかなりそうだった。
ぐるっとバスタオルを巻いて扉を開け放つ。
「・・・うぐぅ・・・」
「なんだその声」
無理もない。かっこいいんだから。
ストバスをたまの休日にやるくらいの筈なのに、筋肉も何もかも学生の頃のままだ。
「・・・どこ向いてんだよ」
「! ・・・っ!」
「何も言えねぇのかよ」
目のやり場に困る。
なんだか初々しくなってしまってムズ痒い感じがした。
「いいだろ。初心忘れるべからず」
「あー、にじむーの座右の銘」
浴槽に浸りながら、くだらない話ばかりをする。
恥ずかしさなんて、どこかに消えてしまった。