第5章 そういうところも。【高尾 和成】
「嬉しかったんだよー。一生独りかと思ってたから」
「ははっ、大袈裟じゃねー?」
全く大袈裟じゃありません。
根暗な奴には誰も寄ってこないのよ。
あの頃・・・最初は、戸惑ってた。
いきなり話しかけてきて、いきなり名前呼びしてきて、馴れ馴れしくて。
距離感が掴めなくて、同じ部活に入ったって近づくことすら出来なくて。
そして・・・その目が嫌いだった。
受け入れていそうで、そうじゃない。
来るもの拒まず、去るもの追わず。
そんな感じが漂っていた。
でも──、
「・・・ありがとね」
でも、あなたで変われたから。
私も、私の周りの環境も。
本当に、会えてよかったよ。和成。
「・・・っ」
「・・・照れてる?」
「照れてねぇよ!!」
くるりと背中を向けてしまった和成。
・・・照れてるよね?
ま、まぁここは私が大人になって、見なかったことにしておこう。
「か、和成ー? 次だよー?」
「・・・おう」
背中を向けたまま、頭を掻く。
変な沈黙が訪れてしまった。
「・・・」
「・・・・・・?」
も、もうネタ切れとか?
ちょ、ちょっと切ないけど、仕方ないよね。
「・・・ユキミちゃんの」
「!」
「スキなとこ・・・」
な、なんか雰囲気が違う気が・・・。
「・・・・・・き」
「?」
な、何か言った?
これは聞き返してもいいものなのか・・・。
「た、高尾くーん?」
「・・・引くなよ?」
「え、うん」
高尾くんに引くなんてこと多分ないから。
緊張と期待が混ざる。
変な感覚がする。頭がふわふわする。
「ユキミちゃんのスキなとこはー」
「・・・」
「──俺を好きすぎるとこ」