第5章 そういうところも。【高尾 和成】
─────────---
もう・・・数十分経った。
ふたりとも何故か尽きることなく、延々と続けている。
「次! ユキミちゃん!」
「よし・・・和成のスキなとこは」
「ん~?」
「──軽く見られるけど、実は一途なところ!」
「え、軽く見られてんの、俺!?」
そりゃあ・・・誰にでも笑顔だもの。
「広く浅くでしょ?」
「まぁ、そうだけどな」
自分の世界は狭くしたくない、って。
昔、そう教えてくれた。
素敵だなぁ、ってね。
ますます好きになるようなこと、言わないで欲しい。
「・・・そういうところ、良いと思うけどな」
「そうか? 誤解もあるけどな」
「それも弾き返せる高尾和成!」
「お、なんかカッケェ!」
ほんとだよ。
和成は、かっこいい奴なんだよ。
誤解があっても、和成のかっこよさは私だけ知ってればいいや、なんてね。
「次、俺だな!」
「・・・うん」
私だけ、知ってればいいのに。
こうやって笑うところも、
試合の時みたいな真剣な顔も、
汗を流しながら走る姿も、
どこか、ヤンチャなところも。
──私だけ、知ってればいいのになぁ。
「スキなとこは~」
う・・・自分、キモい重い! 嫉妬とか重すぎるわ!
「ぷっ・・・
──そうやって、百面相なとこ」
「・・・ひゃ、百面相?」
い、いきなり?
「おもしれーなー、ユキミちゃん。
いつも表情コロコロ変わるし」
「ひょ、表情・・・」
変な顔してるってこと?
それはそれで複雑・・・。
「はい次! ユキミちゃん!」
「わ、わかった」
和成の好きなとこは、まだまだ沢山です。
「和成のスキなとこは」
自然と顔を上げていた。
期待するような綺麗な瞳が光ってる。
吸い込まれそうだけど、どこか何かを突き放してるようにも見えた。
こんなにちゃんと目が合ったのは初めてだけど、何故か逸らさなかった。
和成は私をそんな目で見ていないから、
私も普通の友達として目を合わせよう。
「・・・私と話してくれるところ」
「・・・話す?」
「ふふ・・・誰も話しかけなかった私に、話しかけてくれた」
人見知りで誰とも話せなかった私に、
ヒーローは手を差し伸べてくれた。
眩しいくらいの笑顔で。