第5章 そういうところも。【高尾 和成】
──放課後・教室───
「なー、ユキミちゃん」
「なにー?」
「『スキなとこゲーム』って知ってる?」
「? なにそれ?」
突然、和成は変なことを言い出した。
「お互いの好きなところ言い合って照れた方が負けだってよ」
「えー・・・そういうの苦手」
照れないとか出来るわけない。
恋人、ではないけど・・・好きな人に対して、照れないなんて。
「しようぜー?」
「うーん・・・」
どうしよう・・・。
ここは別に付き合ってもないんだから断るべきか。
「勝ったら好きなもの1つ買ってやるから」
「よし乗った」
ガチッと手を握る。
これは何がなんでも勝たねば。
────────---
「えー、ではでは」
「「スキなとこゲーム!」」
ルールは簡単。
友達同士でも出来る簡単なお遊びだ。
お互いの好きなところを1つずつ言っていく。
言うことが尽きたり、先に照れてしまった方が負け。
『そんなことないよ』って言ったり、否定したりしても負け。
日本人としての謙虚さを捨てるゲームなのね。
「和成から!」
「よし。ユキミちゃんのスキなとこはー」
・・・緊張してきた。
「──よく笑うところ!」
「お、おぉ・・・ありがとう」
つ、次。私か。
「和成のスキなとこは」
「お~?」
「バスケが上手なところ!」
「ほー、そう来るか!」
まずは無難なところから言わないと。
次、和成。
「スキなとこは~」
ぐ、懲りずに緊張してしまう。
「勉強がめっちゃ出来るところ!」
「おお、あざす」
緑間ほどではないけどね。
それにしても、随分心臓に悪いゲームだな・・・。
さっきから心臓の音聞こえてないかドキドキなんですけど。
「・・・ユキミちゃん?」
「っ! はい! 言います!」
和成のスキなとこ・・・
──全部 なんてね。
「人のことよく見てるとこ!」
「おおー!」
嬉しいよなぁ、なんて。
そんなに余裕なのあなたくらいよ。
もう恥ずかしすぎて泣きそうなんですけど。
次・・・和成。
「よし! まだまだ行くぜ~!」
「かかってこい!」
・・・スキなとこ、じゃなくてさ、
ただ『好き』って言ってもらえたらな。
こういうゲームするあたり、恋愛対象でもないんだろう。